ポジティブシンキングLife

変わっていくことをもっと楽しもう!

■変わって行くことを強制された時代

社会が便利になってきたら、生きることに不便を感じます。不便な時代とは、たとえば江戸時代です。電気はない。洗濯は手で洗う。ご飯はスイッチ1つで炊けない。夜はろうそくの薄明かりのなかでご飯を食べて、薪をくべて風呂をわかす。

こういう時代にあっては、人は自己実現がどうとか、本当の私がどうとか、個性がどうとか、あまり考えなかったように思います。洗濯をしたりご飯を炊いたりしているうちにあっという間に1日が終わってしまうからです。今の私たちは、暇だから、暇にまかせて個性とか自己実現とか、むずかしい概念を考えて、答えが出せずに悶々と悩みます。便利な社会の中で不自由に生きています。1つの発明は新しい不自由を生むと言われますが、まさしくそのとおりです。

江戸の時代はあまり自分にこだわりがなかった時代です。こだわりたくても社会的にこだわれなかったのかもしれません。江戸時代にあっては人は成人をしたら名前が変わったからです。つまり人は変わって行くものだという概念が非常に定着していたのです。今の時代で言うと、高校を卒業した時点で、本人が望む望まないにかかわらず、名前が変わるようなものです。 いまの世の中は、本当の自分がどうのこうのという考えが非常に強い世の中ですが、名前が変わったら本当の自分もなにもありません。

本当の自分とは、自分が理想とする自分のことなのでしょうが、江戸時代は、自分が新しい自分(本当の自分)を追い求めるのではなく、社会が「あなたは今日から新しくなりなさいね」といわば勝手に新しい自分にさせられていました。今の社会は何十年経っても、同じ名前を使用するから、小さい時からずっと同じ人格でいることを強要されているみたいな気分になって、そういう息苦しい気分が「本当の自分」を探すことに繋がっているのでしょう。

変わって行くことを楽しもう!

■人は、新しい知識を得るたびに小さく変わって行きます。

新しいことを知るということは、そういうことです。そういう「変化していく自分」をおおいに楽しみましょう。ピアノが弾けなかった時の自分と、ピアノが弾けるようになった自分は、違う自分です。弾けるか弾けないかだけの違いですが、自分がいい方向に変わっていったのです。いわゆる「本当の自分」が、ある1つの目標を達成した時の自分だとすれば、本当の自分とは、そういう小さな変化の積み上げの先にいます。毎日新しい知識を得て、手を動かして、出来ないことができる喜びを少しずつ味わって行けば、その先に本当の自分がいます。

変化していくあなたのことを見て、周囲の対応も変わってきます。自分とは、ある種の概念でしかなく、あなたのまわりの人があなたをどう見ているか、それが「自分」でもあるのです。変化していくあなたを周囲の人が好意を持って受け入れてくれたら、あなたは本当の自分にずいぶん近づいたといえるのではないでしょうか?

気楽に生きよう

■毎日、少しずつ変わって行くことができたら

人生はずいぶんと楽しくなります。新しい発見がありますからね。楽しくなれば「本当の自分探し」みたいな難しい概念など、どうでもよくなります。どうでもよくなれば、人とかかわって生きていくのが楽になります。人に多少振り回されて生きていくくらいのほうがちょうどいいなと思えてきます。生きていく上で、ものを考えなくてはならない局面は折に触れてありますが、ものを考える時に役に立つのが、人に振りまわされた時の経験です。つまり理不尽な経験がものを考える大きなきっかけをつくってくれます。理不尽な経験をし、その経験を咀嚼して、理不尽な経験を自分のものにしていけば、人はまた良い方向に変化します。つまり、気楽に生きていけば、どんどん自分の思うように変化していけるのです。

元来、本当の自分なんて存在しないのです。何人かの哲学者が近代自我の歴史を書いている本があるので、なぜ本当の自分なんていないのか知りたければ、専門書をあたってみられることをお薦めしますが、そんな「本当の自分」みたいなややこしい概念など抜きに、もっとシンプルに生きることを楽しみたいものです。

シンプルに…というのは、自分のしたいことを今やるのか、やらないのか。それだけということです。人生は限りある時間のうえに成立しています。今、やらないんなら、いつやるんですか?ということです。今やれば、やった分だけ自分が変化します。新しい発見があります。明日もなにかをやれば、発見があり変化します。毎日そういうシンプルで楽しい時間を送っていたら、人に「あいさつをしましょう」とか「プラス思考の人になりましょう」とか、めんどくさいことを言われなくて済むようになります。そういうことを言おうとも思わなくなります。自分が生きている楽しさがまわりの人間に伝わって、生涯、新しい発見をしながら変化し続けていくことができます。そういう人を、「好奇心旺盛な素敵な人」と言うのです。